1Q84 BOY (CANNOT) MEETS GIRL
- 作者: 河出書房新社編集部
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/07/22
- メディア: 単行本
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1Q84単純に面白かった。
1984を下敷きにするなら監視社会のSFだろ、なんて考えた自分はやはり浅はかだった。1984の歴史改変という要素にスポットを当ててると捉えられるみたい。そしてビッグブラザーに対応してリトルピープルなる世界的存在が出てきて、なにか世界を司る存在なのに愉快で楽しい。
還暦迎えたおっさんが、世界そのものを巻き込んで、恥ずかしいくらいの恋愛物語を描いてることに単純に感動した。こんなことをいうとかなり語弊がある、いや、恋愛模様なんてどこにも描かれてないじゃないかって反論があるかもしれないが、まあ、ポニョみたいなもんだよ!?
僕は、村上春樹の作品では毎回「性」をどう取り扱うのかが気になる。
青年の男主人公って村上春樹の長編には結構久々の登場なのではなかろうか。だから、小説を書くことへの社会的意識を根本的な変化があることを踏まえつつも、ついつい初期の作品と比べてしまう。
確かに相変わらず男の主人公は受身でいながらリア充。
しかし、ノルウェイの森のワタナベとは嫌だけど、今作の天吾君になら抱かれてもいいかなという感じ。笑
それって、天吾の周囲に身近に完璧な男性像を体現しているナガサワさんや五反田君のような存在を描いていないからかもしれない。女性をとっかえひっかえできちゃうやつね。賢いお塩先生みたいなやつ、というと語弊があるけれど。とにかく、村上春樹の初期作品に顕著だった「女性をとっかえる」というような男性社会の関係性が今作には見られず、天吾君はマザコンで年上女性を大切にしている。
むしろ女の主人公である青豆さんが女友だちと主体的に男をとっかえてやるシーンがあって、男に復讐をしている。今回は同姓間の関係は女性主人公である青豆さんが引き受けている。でも青豆さんもハゲ頭の中年男がタイプのファザコンである。
天吾の性生活は穏やかなものだし笑、ときたま派手にやる青豆も、女性に危害を与える男を抹殺する存在なのであります。 村上春樹の小説で黙認されてきた男性の横暴が、今作では忌むべきものとなっていることが、小説にバランスをもたらしている。
なので、主人公に対して嫌悪感を抱くことがない。社会にコミットメントした上で、それに沿った青年の主人公像を描き、男を殺す設定を取り入れることで、今までの村上春樹小説、大げさに言えば歴史的に意識されてきた男性優位的な権力との均衡を保つことができた。善と悪の均衡がこの小説の重要なテーマなのですが、性の均衡というテーマも含んでいるような気がする。
だからこんなに売れてるのかな、なんて勝手に考えます。