1.COLD BLUE (Dorothy Little Happy 「STARTING OVER」を読む)

地図を描くこと~Dorothy Little Happy 「STARTING OVER」を読む

 

――――このアルバムはドロシーリトルハッピーから導かれた12の音楽と詩が綴る、ひとりの少女の通過儀礼の季節を描いた物語だ。

 

もしも僕が立派な文学賞でももらっていて、権威的な立場からなんちゃってなコメントを求められたら、このアルバムに向けてこんなコメントを寄せようと思

 

「物語」といっても、もちろんこの「STARTING OVER」は誰かの意図に合わせて作られた曲をドロシーが表現したコンセプトアルバムではない。彼女たちに関わるスタッフと、複数の作家の手によって、ドロシーに向けて、そしてドロシー自身の意向を取り入れながら、制作された(ストックされた)12のポップミュージック、そのひとつひとが適所に配置されたことで、そこに自然と一人の主人公が現れ、彼女の心象風景が綴る物語が生まれたように思えるの

 

そんな観点から、このアルバムから「物語」を浮かび上がらせることを目的とした、全曲レビューをしてこうと思う。

 

 

 

1、COLD BLUE  

――――樹海の中で

 

“まだまだ消えない君への思い”という一説でこのアルバムは幕を開ける。

 

過去の出来事をひきずったまま、まるで樹海を彷徨うかのごとき狂気に満ちた混沌の中で君を探し続ける主人公の姿は、「君」の喪失がとてつもなく大きい苦しみであり、強く求めていることを感じさせる。

 

しかし、その気持ちとは裏腹に、主人公は“想い出に変わるまで”、既に想い出にする覚悟をしているのである

 

「君」を失った出来事に対して主人公は深い後悔の念を抱いており、「君」を強く求めるが、一方でもうどうしようもない現実に抵抗することなく「君」のことを諦めている

 

自分の意思と現実と行動がバラバラな状態で主人公は樹海のような混沌に迷い込んだ。

 

この状況がこのあとの物語において主人公のトラウマとなりのしかかることになる。

この物語のプロローグ、主人公の出発点。

 

彼女は樹海を抜け出せるのだろうか…