11.STARTING OVER(Dorothy Little Happy「STARTING OVER」を読む)

――――「でも大丈夫」ってわたし 最後まで強がってみせた

 

※アルバム収録曲の歌詞を受けて勝手に考えたことです。



「青い空」にて、主人公にとっての「あなた」を巡る物語は終わった。そして次は主人公がまた新しく、一歩踏み出す時だ。

 

しかし、主人公は、この「STARTING OVER」で再び“ひとりじゃ生きていけない”と「あなた」のことを求め続けている。振り付けも、ギターソロ部分での「混沌」を表すかのようなイメージが印象的だ。)

 

再出発のタイミングで、過去に囚われている状態では、前になど進めない。再び、「COLD BLUE」のように、樹海に迷い込みそうな歌詞である。

 

この「STARTING OVER」というタイトルは主人公の精神的な成長という意味合いの「再出発」出会って欲しいが、楽曲が進むにつれ前向きな歌詞が見当たらない。少しずつ成長を遂げてきたと見えた主人公はまた降り出しに舞い戻ってしまうのか…

 

歌詞自体の意味をストレートに捉えると、そういった懸念が拭えない。

実際、自分も長いこと、主人公が過去にとらわれ続けている表題曲「STARTING OVER」の存在が、このアルバムの一番の疑問点だった。アウトロの未来へ続きそうな雰囲気は音楽的な希望を示唆するが、歌詞からは主人公の成長を想像させてくれる要素がないのではないか…

 

アルバムを流れで聴く中でこの曲違和感を感じ、「明日は晴れるよ」にたどり着けなかったことも何回かあった。

 

しかし、主人公が一度前向きになった「青い空」の後にこの曲が配置されているのにはきっと意味がある。やはり、この曲の語り部は歩き出そうとしている主人公であるはずで、どこかに、この物語によって成長した主人公の痕跡があるはず…

 


この曲の歌詞のある部分を「言わなくてよかった」「青い空」の間で省略されたものと考えてみる。


省略された部分とは、聞き分けのいい自分と決別した主人公が「あなた」に対してとった「行動」についての描写と、その恋の結末だ。

 

「あなた」に“突然 もう会えない”と切り出さた主人公。「ストーリー」からずっと“ただ好きだって言ってほしかった”思いは報われなかった。

しかし、「言わなくてよかった」で“聞き分けのいい自分”と決別の決別を決めた彼女“最後まで強がってみせた”のだった。「あなた」の思いが別の人にあっても、“「でも大丈夫」”と「あなた」を諦めない意思を伝え、“最後までそれを貫き通そうとした。


これが主人公が青い空で言葉にしなかった(できなかったあなた」への行動と、この恋の結末

このように考えると、過去を引きずっているように見えるこの曲の中に、主人公の「成長」を確認することができる。

 

そしてその成長は2段階に捉えられる。


ひとつ目は、主人公は確実に「あなた」に思いを伝え、実行していたことだ。


主人公の内面の言葉で語られるこのアルバムの曲の中では、主人公の「意思」については語られるのだが、実際に「あなた」に思いを伝えている事実を確かめられる曲は「青い空」までなかった。(だから「あなた」に思いを伝えていない前提でこのアルバムから物語を読み取ってきた)

 

しかし、この曲で主人公自身の台詞「でも大丈夫」カギカッコで綴られたことで、あなたに対して自分の気持ちを伝えたことがはっきりと描かれた。主人公はこのアルバムの中で、確かめてきた意思を初めて声に出して「あなた」に伝えたのだ。

(「でも大丈夫」はドロシーの代表曲「デモサヨナラ」に対応することばとして考えられる。「デモサヨナラ」といってしまった“聞き分けのいい自分”への決別として、「でも大丈夫」という台詞が発されたのではないか。坂本サトルさん、磯貝サイモンさんといった作詞家を横断して。…これはアルバム外の話になってくるので、また別の機会に。)

 

ふたつめの成長は、主人公がこの曲のなかで、叶わなかったこの恋の結末を語っていることだ。


「言わなくてよかった」と「青い空」の間での省略された部分、つまり語ることができなかった「あなた」への恋の結末をここで主人公はここで振り返ったのだ「青い空」では“きっといつか あんなことも あったと笑える日がくる”の一言にまとめた“あんなこと”を自分自身の言葉にして綴ったのである。このこと自体が、更なる主人公の成長を示しているといえる。

 

前向きにな「青い空」の後に、さよならなんていえないと、再び「あなた」を求める。

「STARTING OVER」は「あなた」と出会ったあとの一連の出来事を振り返り、そして今も変わらない気持ちを綴った歌なのだろう。

 

聞き分けのいい自分と別れた自分だから、「あなた」に影響を受けて“夢は叶えるもの”として「あなた」という夢を求めた自分だから、


もう、人生はこんなものだって、切り替えることはできない。だから、「あなた」に対する思いは、確かな自分の気持ちだ。

 

「STARTING OVER」というタイトルでありながら、再出発をする意思を表明しないこの曲には、再出発をする時にも、決して揺るがない過去への想いかま描かれている。

 

「あなた」との恋を経て、主人公は自分に向き合った。

 

「青い空」で“きっといつかあんなこともあったと笑える日がくる”と主人公は語ったが、もう彼女の中には「あの頃の自分」として、過去の自分を振り返ることはない。

 

「あなた」が好きという気持ちはいくらでも過去の過ちにできる「若さ」故のものではなく、「自分」の本質的な部分が求めるものだ。今のこの気持ちは、未来の「自分」でも変わることはない普遍的なものであるという確信を得、それを感じている自分がいる。


だからこそ、その強い想いから綴られた言葉だけが「STARTING OVER」に表れていると考える。


大きな壁に立ち向かう勇気を持ち自らの意思を貫いたことで、決して揺るがない「自分」を発見し、主人公は「大人」への階段を登ったのではないだろうか。


COLD BLUE

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2 the sky

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colorful life

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恋は走りだした

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ASIAN STONE

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CLAP!CLAP!CLAP!

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ストーリー

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どこか連れていって

言わなくてよかった

青い空