Who is callme ?

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香美、瑠海、美杜でcallme。

富永美杜のソングライティング、早坂香美、秋元瑠海を含めた3人が綴る歌詞、残響レコードから作品を発表しているRumbのアレンジという体制で作られたスタジオアルバム「Who is callme?」。

 

ミュージシャンとしての出自ではない3人が歌詞・曲を試行錯誤して制作しながら、アレンジからマスタリングまでRumb氏が一環して行うというある意味実験的な、とても贅沢なスタイルで作られている。

 

そんなフレッシュな捉え方もできるし、一方で、アイドルとして歩んできた3人の歴史、蓄積された技術、経験とその活動に対する様々な想いというフィルターを通して語ることもできる。

 

クールでスタイリッシュなグループとして、確かな経験と技術を持った3人の更なる飛躍を期待するグループとして、いびつな運命を背負う熱いグループとして、callmeには様々な顔がある。

 

「Who is callme?」

 

英文法からも解放されているようなタイトルは彼女たちを知らない人にも、彼女たちを知っている人に向けても、重層的な意味を持つ問いかけになるようなタイトルで、このアルバムの聴き方、callmeの楽しみ方も多様性に満ちあふれていることを示しているようだ。

 

また、このアルバムのタイトルで単語としてのcallme は単数系として扱われていることからも、語呂の良さだけじゃなく、3人のグループであるけれどもcallmeを「ひとつの集合体」として捉えていることを想像して胸が熱くなる。

 

ぐっと惹き付けられる美しい色彩を感じられるジャケット、そして歌詞カードのアートワークは水中の3人を捉えたもの。

 

富永美杜のメロディーとRumb氏のアレンジはカラッと爽やかさのある耳障りのものでもどことなく水っぽさというか、水中で浮いているようなイメージを感じるので、個人的には、このアルバムに非常にマッチしているアートワークだと思っている。

 

MVも含め、ワンシーンでシンプルに作るアートワークはドロシーリトルハッピーの頃から一環していて、派手なインパクトはなくともコンセプトの統一感がとても心地よくて、このavexのチームのトータルディレクションの考え方は、作品が出るたびに満足度を高めてくれている。

 

そういった心地よいコンセプトの一貫性を感じながらアルバムを聴くと、やはりそこにもcallmeの音楽としての筋が通っていて、僕は何度も何度も全く飽きることなくこのアルバムを聴いている。非常に魅力的な作品。最高。今すぐ聴いて。

 

なんて話でブログを終わらせたいけれど、それと共に、いろいろとcallmeの戦略やこれからを考えさせてくれる一筋縄ではいかないアルバムだとも思う。

 

この作品に収められる楽曲を聴くと、callmeの本当のスタートとして外野を納得させられるクオリティを保ちつつ、過度な色づけをしないことがミッションだったのではないかと考えられる。ぜんぜんもっとポップなわかりやすいアルバムにすることもできたはず。

 

もちろん、富永美杜がまだまだ駆け出しのソングライターでポップなメロディーを勉強中ってところもあるんだけど、富永さんらしさのあるメロディーかつ既聴感は高い、“ベタより”の「Missing you」がアルバムに入っていないところに、そういった今回の楽曲コンセプトをコントロールしようとする意図を感じたりもする。

 

My afectionやFor youといったEDMマナーを取り入れている曲も、リード曲のstep by stepのクラップやシンガロングも、アルバム収録曲のバランスを考慮してぎりぎりで1曲つくって追加したというOh yeah!のサビ前のタメも、ここ数年の音楽のトレンドに多様されている要素を含みながらも、ベタに「高揚感を煽る」音楽的な機能性は抑えめになっている。

 

それによって、3人と音楽が切り離されることなく、Rumb氏の様々な音楽的なアプローチをcallmeの表現として楽しめる。記号や機能を楽しむのではなく、音楽そのものを楽しむ。それは秋元瑠海、早坂香美、富永美杜の3人のイメージに適合しているし、彼女たちのライブの盛り上げ方もそういった考えを垣間見ることができ、今のcallmeのオリジナリティとしてアルバム全体に貫かれた姿勢であると感じる。

 

 

とはいえ、そういった姿勢の心地よさだけで満足していては、彼女たちの夢にはきっと届かない、callmeのコンセプトを感じさせつつ、心を強引に掴みにいくような曲が必要であるとおそらく彼女たち3人は誰よりもその経験から察知しているのではないかと思う。アルバムが出る前には、callmeのアイデンティティーを保ちながら万人に開かれた「ポップ」ということがひとつの今後のキーワードであると感じていた。

 

そのひとつの回答だと感じられたのが、”リード曲を作る”という目標の元で生まれたピアノリフから形づくられた「I’m alone」という曲。callmeのアレンジのスタンスは変えず、わかりやすさと憂鬱っぽさが共存している富永美杜のメロディー。結局曲調から歌詞のテーマは失恋ということになり、リード曲には不向きという判断がなされたようだけれど、1曲が何かを変えてくれるかもしれないという意味で非常に期待感を高めてくれた。どういったパフォーマンスになるのか楽しみだ。

 

アルバムを締めくくる曲、「just trust」はJ-POPであまり聴いたことがないようなメロディーだと思う。かといって、わかりにくさは感じない。ドラムパターンを基に作り始めたらしいけれど、ストリングスではなくピアノ主体であそこまで壮大な印象を与える曲が出てくるのって、リスナーとしてとても嬉しい。

 

callmeを確立したいい作品がある、未来への期待がある、まずはそれが答えだから、過去の話は野暮だけれど、3人の選択(いや、選択という言葉は100%正しい意味ではないかもしれないけれど)をとても誠実な形で示していると僕は思う。それは、僕にとってはとても感動的なことだ。

 

 

callmeはブログやTwitterであったり、ファンとのコミュニケーションだったり、MCで言ってたことだったり、そういった小さな表現が気づけば作品に反映されていたりする。あのとき言ってたことはこういう感じで作品になっていたんだ、って何度も思った。アイドルとしての魅力を発信する機会がリアルタイムの作品作りに直接繋がっている。それは大人が考えたコンセプトではなくて、彼女たちの歩みの中で、自然にそうなってしまったことで、なんと言えばよいか、とても面白いのだ。

 

アイドルとしてのアイデンティティを持ってる人が、曲を作る側としても両立を試みるってのは、ちょっと表現を間違えるとアーティスト気取りみたいな薄っぺらい先入観を持たれやすいのではないかとも思うし、そもそも楽曲の好みは個人によるから、なかなかcallmeの面白さをキャッチーに伝える言葉がないし、あまり面白がるものでもないのだけれども、callmeを見続ける、気にかけ続けることって、それ自体が奇跡的にエキサイティングな経験だと思っている。

 

多分、何度人生を生きたとしても、そんな音楽の成り立ちを楽しみながら曲を聴き、ライブをみて、応援できる経験なんて、そうそうないだろう。

 

callmeを精一杯楽しもう。まだまだこれから、さらにここから。

 

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