7.「ストーリー」(Dorothy Little Happy「STARTING OVER」を読む)
――――何も言葉にしたくたって目が合えばわかってたんだ
※この前の曲までのなかから推測できることを踏まえて勝手に話を見出そうとやってることなので、曲単体の解釈ではありません。
「恋は走りだした」にて、「君」が好きだという自分の気持ちに気づいてから、「ASIAN STONE」、「CLAP!CLAP!CLAP!」にて、「君」との新しい世界に踏み出す冷静さと大胆さを確認し、ついに主人公は「君」との恋を始めようと決意した。
「恋は走りだした」でいつも「君」と並んであるいていた遊歩道は、「君」に恋をして“はじめて一緒にあるく帰り道”になった。
ただし、この段階ではまだ、「君」も自分と同じ気持ちなのか、主人公は確信にいたっていない。
“きみはどうしてだまってうつむいてるの?心の奥 読み取れなくて”
と「君」の本当の気持ち、本心を聞きたがる主人公。
この曲は「君」と日々を過ごしていく期待を歌った曲であるが、もう一方で、“君の描くストーリー”を「君」の“心の奥”の主人公に対する気持ちと読み替えることで、「君」が本当に自分のことを好きでいてくれているのか確認する曲として考えることが出来るのではないだろうか?
1番では“次のページめくってよ”と「君」の気持ちを文字で確認したいと思っていて、
2番では“次のシーンをとってよ”と映画の台詞、つまり声で確認したいと言う。
永遠に残る紙に印字された文字ではなく、その気持ちの表明が自分の記憶の中にしか残らない声でもいい、“君の描くストーリー”「君」の気持ちを聞きたいのだ。
しかし、この曲では最後までその願いは叶わないのだと思う。
3番でついに“君が描くストーリーはまるで虹色のメロディー”となり、そのメロディー“口ずさむラララ”には歌詞がなく、主人公は結局、「君」から「君」自身の主人公に対する思いを言葉で聞けなかったのではないか。
しかし、君への信頼から、自然に、迷うことなく、“何も言葉にしなくたって目が合えばわかってたんだ”と「君」の気持ちを自分の判断で解釈することを決める。
一緒に帰ったり待ち合わせをしたりする2人の関係に対して、胸の高鳴りや未来への希望をを感じながらも、「君」から本心を言葉で伝えられることのないまま、“君が描くストーリー”は主人公の想像の世界だけのフィクションとなる。(この曲で「マシンガンを放つ」シーンを取り入れたラッキィ池田氏の振り付けも意味深だ。)
では自分から聞いてしまえばいいとも思えるのだが、「CLAP! CLAP! CLAP!」で傷ついてもいいと心に決めていても、「君」の前では“素直になれない私”になってしまい、自分から「君」の本心を聞きだすことはできない。
それでも
“未来は予測不能 毎日がワンダーランド”
と言い放つ主人公。
本心はことばにして伝え合っていないけれども、主人公が想像力を働かせて「君」と関わって行くこの恋は今、彼女のなかで大きなきらめきを放っている。そんなきらめきのなかに、永遠に「君」といたい。
過去に傷ついた主人公は「君」との恋というという新しい世界に踏み出し、「君」から逃げずに、「君」に信頼を寄せるようになった。
「君」も自分のことを思ってくれているのか確証はなくとも、そうだと信じている。
“雨あがりの青空へとこの物語は続いていく”という一節に、過去に長く「雨」(=樹海)の中にいた主人公の期待と願いが込められている。
COLD BLUE
http://goziland.hatenablog.com/entry/2014/03/20/085909
2 the sky
http://goziland.hatenablog.com/entry/2014/03/20/182323
colorful life
http://goziland.hatenablog.com/entry/2014/03/20/185718
恋は走りだした
http://goziland.hatenablog.com/entry/2014/03/21/221037
ASIAN STONE
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CLAP!CLAP!CLAP!
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6.CLAP!CLAP!CLAP!(Dorothy Little Happy「STARTING OVER」を読む)
――――つまづいちゃって 傷ついちゃって 未知の世界へ飛び込んでいこう
「ASIAN STONE」で一度冷静に自分の気持ちを確かめた主人公は、「君」との恋に踏み切るため、自分を開放する。
「君」との恋の先には「COLD BLUE」のような苦しみが待っているかもしれない。それでもいい、傷ついてもいい、もしそんな結末が待っていてもいい。その先に“転んだ方が見える景色 きっとあるから”。
“ハッピーになれる愉快な方法”で「君」に対する気持ちに向き合い、新しい世界に踏み出すために、主人公は会えてポップで軽快な表現で自分自身を奮い立たせた。
いままで「想い」を連ねてきたこのアルバムですが、このあとついに「君」との「ストーリー」が始まります。
COLD BLUE
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2 the sky
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colorful life
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恋は走りだした
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ASIAN STONE
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5.ASIAN STONE (Dorothy Little Happy「STARTING OVER」を読む)
――――でも見失わない そして溺れない様に 私らしく 穏やかなスピードで
「恋は走りだした」で勇気を出して“新しい世界の大きな扉”を開いた主人公。しかし、すぐに物語のスピードを加速させて「ストーリー」に行かないのがこの物語が一筋縄ではいかないところだ。
もしも「君」に思いが通じて、「COLD BLUE」の歌詞のように相手のことしか考えられなくなくなってしまうのではないかという漠然という不安が主人公にはあるのかもしれない。
“これから訪れる日々は輝いていて 私には眩しすぎるでしょう”
恋は走りだした、だからこそ、そこで一度立ち止まって冷静になり、“不安な日々の中 見つけた大事な答えを忘れずいく”ことを主人公は確かめるのである。
COLD BLUE
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2 the sky
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colorful life
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恋は走りだした
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4.恋は走りだした(Dorothy Little Happy「STASTING OVER」を読む)
ーーーー伝えよう 想いのすべてを
主人公にとって自然とそばにいた「君」とのやりとりは“みんな恋だった”のに、それに気づかなかったのは「COLD BLUE」の出来事によって他人との関わりを無意識に避けようとしていたからかもしれない。
「君」に向けた言葉「大好きです」。
アルバムを通して考えると、これは主人公の心の中で生じた言葉なのではないかなと思う。
親しい関係の友人を「好きなんだ」って気づいた時に、気分が高揚しつつも、同時に謙虚になっている自分がいる。
「大好きです。」という表現にはそれがよく表れているのではないかなと思います。。
底抜けに明るい曲なのに、この曲を聴くたびに不思議と感動が生じる。時には切ない気持ちにもなる。
それは、アルバムの流れの中で、しばらく「特定の誰か」のことについて語らなかった主人公が、再び「誰か」に深く関わろうという、強い意思を表明する瞬間をこの曲で目の当たりにするからなのではないだろうか。
COLD BLUE
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2 the sky
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colorful life
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3.colorful life(Dorothy Little Happy「STARTING OVER」を読む)
――――どんな出会いが待ってるの? どんな色をしているの?
「2 the sky」で樹海を飛び出し、“空”から俯瞰して捉えた広い視野を獲得した主人公。
この曲では大地に足を付けて空を見上げ、瞳に移る世界の細部の色彩にまで気を向けるようになっている。
全能感のある空の視点から、地に足をつけた大地からの視点への転換に、主人公が迷いを振り払って、再びこの現実の世界と向き合えるようになったことがうかがえる。
「君」しか見えなかった混沌から抜け出して、空の視点からこの世界を大きく肯定した。そしてこの世界で見えるさまざまなものに対し、喜びや愛しさを感じるようになった。
さらにこの曲の後半、主人公は「2 the sky」では、(過去の恋愛のことを忘れたいかのように)全く語らなかった誰かとの「出会い」について語り始めた。
“変わるのは自分自身”と受け身になるのではなく、自分から世界に対してアクションをするという姿勢を初めて見せた主人公。
そして、“出会いという彩りと輝きの力”がもたらす“まだ見ぬ世界”の足跡は、彼女のすぐ近くまで来ているのであった。
COLD BLUE
http://goziland.hatenablog.com/entry/2014/03/20/085909
2 the sky
http://goziland.hatenablog.com/entry/2014/03/20/182323
2. 2 the sky (Dorothy Little Happy「STARTING OVER」を読む)
2、2 the sky
――――始まりの合図
ここから物語本編が始まる。
プロローグ「COLD BLUE」で樹海のような混沌を彷徨った過去、“地図”を失った過去を経て、“始まりの合図”を聴いた主人公は、“地図がないなら、感覚でいいんじゃない”と、無理やり再出発を宣言する。
悩みつづけた過去に対し、“答えはない”ことに気づいた彼女は、“心のままに”
1 and 2 the sky !!!
リズムを取りながら 助走をつけて、主人公は一気に空に向かって飛び出した!!!
樹海からの強行脱出は成功し、相手のことしか見えていなかった狭い視野の世界に対し、“空から”俯瞰するように、360度、広い視野で捉えた世界がそこにある。「私はどこへでも行ける。」
主人公は新しい世界に辿り着いた。
“簡単に探せない”ものを求める気持ち、ワクワク感を胸に秘めて。
1.COLD BLUE (Dorothy Little Happy 「STARTING OVER」を読む)
地図を描くこと~Dorothy Little Happy 「STARTING OVER」を読む
――――このアルバムはドロシーリトルハッピーから導かれた12の音楽と詩が綴る、ひとりの少女の通過儀礼の季節を描いた物語だ。
もしも僕が立派な文学賞でももらっていて、権威的な立場からなんちゃってなコメントを求められたら、このアルバムに向けてこんなコメントを寄せようと思う。
「物語」といっても、もちろんこの「STARTING OVER」は誰かの意図に合わせて作られた曲をドロシーが表現したコンセプトアルバムではない。彼女たちに関わるスタッフと、複数の作家の手によって、ドロシーに向けて、そしてドロシー自身の意向を取り入れながら、制作された(ストックされた)12のポップミュージック、そのひとつひとつが適所に配置されたことで、そこに自然と一人の主人公が現れ、彼女の心象風景が綴る物語が生まれたように思えるのだ。
そんな観点から、このアルバムから「物語」を浮かび上がらせることを目的とした、全曲レビューをしてこうと思う。
1、COLD BLUE
――――樹海の中で
“まだまだ消えない君への思い”という一説でこのアルバムは幕を開ける。
過去の出来事をひきずったまま、まるで樹海を彷徨うかのごとき狂気に満ちた混沌の中で君を探し続ける主人公の姿は、「君」の喪失がとてつもなく大きい苦しみであり、強く求めていることを感じさせる。
しかし、その気持ちとは裏腹に、主人公は“想い出に変わるまで”と、既に「君」を“想い出”にする覚悟をしているのである。
「君」を失った出来事に対して主人公は深い後悔の念を抱いており、「君」を強く求めるが、一方でもうどうしようもない現実に抵抗することなく「君」のことを諦めている。
自分の意思と現実と行動がバラバラな状態で主人公は樹海のような混沌に迷い込んだ。
この状況がこのあとの物語において主人公のトラウマとなりのしかかることになる。
この物語のプロローグ、主人公の出発点。
彼女は樹海を抜け出せるのだろうか…